あなたの会社は売りやすいか
はじめに
こんにちは。物語工房の岡村です。
今日は、M&Aを活用して会社を売りたいと思う方に検討すべきポイントについて解説したいと思います。是非、参考になさってください。
あなたの会社はあなたが思っているほど良い会社ではない
近年、会社経営者であればM&A仲介業者からのDMが届かなかったことがないかと思います。
あなたの会社を買いたいと思っている会社がありますので是非紹介したい、というDMは経営者であれば嬉しいものです。
今すぐではなくても、いずれM&Aを検討する方であれば様々なM&A仲介・FA業者から同様のDMが来れば少なからず優越感に浸るものでしょう。
ただ、もしそのDMに触発されてM&Aを活用し自社を売却する場合、残念ながらあなたの会社はご自身が思っているほど良い会社という評価は得られないでしょう。
そもそも、DMというのはM&A仲介・FA業における仕入活動であって、あなたの会社の中身なんか知りません。
信用情報機関に決算書を提出しているとしても、会計情報というのはその会社に所属する人間が意図を持った活動の結果を示す”言語”であって、それだけでは自社の付加価値を正しく示すことはできません。
何故なら、自社が有する収益力の源泉は、会計情報には記載されないからです。
繰り返しますが、会計情報は結果を示す言語であり、そこに法人にとって最も大事な部分は記載されません。
会計情報のみでM&Aを進めようとすると、自社の価値を充分に示すことができず、結果として割安な価格になるケースが多くなるでしょう。
いや、私はM&A仲介業者、FA業者のヨイショに浸りたい、悦に浸りたいのだということであれば止めませんが、会計監査など受けたことのない会社が、会計情報のみを持ってM&Aを検討するなど愚の骨頂であり、それだけでは良い会社と主張するのは難しいことなのです。
いきなりドッキリするようなことを申しましたが、ここからは、具体的に”売りやすい会社”とは何かをお示ししたいと思います。
売りやすいという意味合いには、業種が大きく絡んできますので、まずはそこからご説明します。
業種からみる売りやすい会社
中小企業のM&Aに携わるM&A仲介業者、FA業者にとって売りやすい会社とはどのようなものでしょうか?
下記の業種は、比較的売りやすい部類に入ると思います。
- SES
- 運送
- 薬局
- 介護
- 建設業
- メディアサイト
いずれも、売上を作るための方式がわかりやすいものです。
SESでしたら人ですし、運送ならトラックの種類などおよそ売主と買主双方が売上の前提となる資産がイメージしやすいものは、売買が成立しやすいものと言えます。
薬局、介護、建設業も陣取り合戦的な要素を含むため、比較的売りやすいと言えると思います。
メディアサイトに至っては、もはや業者を利用する意味合いが薄いかもしれません。
その理由は仕入から営業活動、売上にかかる一連のプロセスがほとんどweb上のデータとして保管されることが多く、M&A仲介業者やFA業者を利用するメリットがあまりないからです。
もしメディアサイトを売却したいのであれば、自分でやることをお勧めします。
無駄な費用を払って業者を活用する意味がありません。
この手の業種は、日々M&A仲介業者からのDMが届いていることかと思います。
業種からみる比較的売りやすい会社
次に、次点で売りやすい業種を考えてみると下記になるかと思います。
- webサービス
- 食品メーカー
- 卸売業
- 旅館・ホテル系(条件付)
webサービスはプロダクトを開発して売っている会社、web広告系、web制作の会社などが挙げられます。
この手の業種の収益力の源泉は完全に”人”になりますが、toC向けの商材であることが多く、SES以上に属人的な印象を持ちますので、売却活動においては自社の魅力を整理する必要があります。
プロダクトを持つ会社なら、赤字であっても買手との明確なシナジー、顧客基盤を共有できるなどの事情があれば売りやすい部類かと思います。
もし、働いている方のほとんどが業務委託などであれば、高い金額で売却できる可能性が一気に下がるかもしれません。
何故ならその場合の収益力の源泉、そしてそこで働く業務委託の人との関係値すら社長本人に相当依存することになるためです。
食品メーカーは、売りやすいジャンルでありますが、工場設備等の固定資産を持つ事業体になるので、売りやすいジャンルであるものの適切な運営がなされているのか、買手がそれを評価できるのかという問題が出てきます。
つまりM&Aで売却活動を行う上で見なければならないポイントが多岐にわたるジャンルになるので、次点で売りやすいとしました。
卸売業については、商流によると思われます。
自社にしかない仕入ルートがあったり、特定の販路に強かったりすると、高い評価を得やすい傾向があります。
最後に旅館・ホテル業ですが、部屋数と立地により特に影響される業種です。
借入が重い場合は、再生手続を経ることも検討が必要です。
業種からみる売りにくい会社
ここまでは売りやすい業種を見てきました。
では、逆に売りにくい業種があるとすればどのような業種になると思いますか?
あくまでも小職の経験則になりますが、下記の業種は売りにくい業種だと言えます。
- 製造業
- 印刷業
製造業が売りにくい業種である理由は、その商流にあります。
製造業の場合、最終商品になるまでの工程において相当な数の事業者が関与しており、そもそも対象事業に関心を持つ先を見つけることが難しい業種だからです。
ただ、候補者が見つかれば話が早い印象はありますので、買手候補者を見つけるという点においてM&Aの成立にハードルがある業種だと思います。
印刷業については、中々最適解が見出しづらい先で、特に商業印刷を生業になさっている事業者様は、上流工程から手がけているといった何らかの強みがないと中々M&Aで売却を行うのが難しい業種かもしれません。
特殊印刷だったり、デザインなどの上流工程のみをおやりになっているのであれば、状況は変わるかと思います。
ここまで、売りやすい業種と売りにくい業種を見てきました。
では、ここから具体的にもしM&Aを活用して自社を売却するのであれば、どのような会社が売りやすい会社なのかご説明したいと思います。
M&Aを活用した自社の売却にあたり整理すべきこと
中小企業のM&Aにおいて、自社を売却したいのであれば内部環境分析を徹底することにあるでしょう。
よく市場環境がどうだこうだと仰る方がいるのですが、それ以上に自社のことを整理する方がよほど大切であり、何より多くの中小企業のオーナーにとってあまり外部環境を意識して経営したという感覚はないのではないかと思うからです。
自社が他社と比較して異なる点はどのようなものなのかを徹底して洗い出してみてください。
具体的なポイントは下記の4つになろうかと思います。
- 仕入
- 販売
- 納品までの工程
- 人材
仕入・販売なら、他社と比較して取引条件や取引先とのこれまでの経緯といったことを整理してみてください。
もちろん他社の細かな情報は知らないでしょうから、ざっくりとで構いません。
これまでの経緯は創業前からの知り合いであるとか、そういった類の話になるのですが、これこそが数値化できない会社の収益力の源泉になります。
どうしてこうなんだっけ?という棚卸が、自社の魅力を発見するきっかけになると思います。
納品までの工程についても、他社のそれと比較してみて自社の魅力を探してみてください。
意外と、他社がやらない工程を行っていたりしてそれが良い評価だったりしますので。
仕入・販売、工程まで整理したら最後に人材をみてみましょう。
何らかの付加価値がある会社であれば、必ず特定の人材や部署を有していることがその会社の収益力を支えていることがわかるので。
終わりに
いかがでしたでしょうか?ぜひ参考になさってください。