M&Aを活用して買収を検討する前に整理すべきこと
今日は、M&Aを活用して買収を行う前にぜひ整理してほしいなと思うことをお話ししたいと思います。中小企業のM&Aもこの数年で大分浸透しました。
それ自体非常に良いと思う反面、無計画にM&Aを活用しようとしているように思える会社様も多い印象を持っております。
その問題の一つに、M&A仲介業者が乱立したことで提案を受ける機会が格段に増えたことがあると思います。
M&Aを活用して買収を検討する会社様とお話をする中で、何のためにM&Aを検討するのか、そういった当たり前のことが整理されていないように思うことが散見されるのです。
これだけM&A仲介業者が増え、M&Aの投資案件の提案が増えれば、必然的に気持ちが大きくなるのは理解できることです。
ですが、気持ちが大きくなったからといってM&A功者になれるわけではありません。
ですから、M&Aを行う上で最低限整理して欲しいことについて、小職なりにまとめてみましたので参考になれば幸いです。
予算が決まっていない
よくあるのが、M&Aの買収予算が決まっていないケースです。
どうしてそれが分かるのかというと、予算を聞いた時にそういった会社様は必ず、予算があやふやだからです。
大抵の方が予算は数億でとおっしゃるのですが、話を聞いてみると実際のところ数千万〜1億前後しか出せないと思われるにもかかわらず、予算以上のものを見ようとしている。
これでは、ウィンドウショッピングと同じで売主も買主も不幸です。
予算が数億といっても、それが1億なのか3億なのか、はたまた5億なのかによって買える会社は違いますよね?
買えないものをみても惨めになるだけであって、予算の中で買える会社はどのようなものか見定めなければ、買えるはずがありませんし、ましてやM&Aが本当に自社に必要なものかの判断ができません。
予算があやふやというのは、はっきりと申し上げてM&Aを活用した買収戦略が全く煮詰まっていないのです。
皆様はものを買う時、最初に予算を決めませんか?
なぜかM&Aになると気持ちが大きくなるのか、それをしてない経営者の方が多い印象です。
ですから、まず予算を決めましょう。
ちなみに弊社のスタンスとして、買手候補者とのやり取りの中でウィンドウショッピングと判断した場合は、その後問い合わせがあっても紹介は一切しない方針です。
関心がそれほど高くもないのに顧客情報だけを欲しがるのは、売主様へのリスペクトに欠ける行為だと考えているからです。
自社に必要なものが何か、整理できてない状態
これも多いのですが、そもそもM&Aの目的が定まっていないケース。
目的が定まっていないから、本当に欲しい事業以外に派生したジャンルも見てしまい、結果としてウィンドウショッピングになってしまう。
例えば、食品メーカーが欲しいという商社さんがいらっしゃるとします。
この時点であやふやだなあという印象を持ちます。
なぜなら、食品メーカーといってもそれが水産系なのか、お菓子なのか、調味料なのか、ジャンルは多岐に渡りますし、何よりM&Aは事業投資であり買ってからが本番な訳ですから、自社のリソースで伸ばせるジャンルに絞らねばなりません。
勿論、エリアが遠いということなら管理方法も考えねばなりませんし、会社の文化の違いについても、尊重する必要があるでしょう。
現実に自社の強みとM&Aで買収する会社がマッチするかどうか、自社が提供できるリソースとは何かを改めて整理することが大切です。
どうしても買収するとなるとテンションが上がりウィンドウショッピングになりがちなので、自社が欲しいジャンル、規模、予算は必ず整理してこれからブレないようにしましょう。
これをやらないと、いつまで経ってもM&Aに踏み切れません。
M&Aの目的は、自社の成長のためであって絶対に買収が目的化してはいけません。
会社というのは1品ものですから、目的を整理できていないと肝心な時に本当に欲しい会社を逃してしまうことになります。
資金の手当をきちんとする
これは当たり前だとお考えになる方が多いと思うのですが、売主の信用力を利用して買収資金を銀行から調達するケースが、中小企業のM&Aにおいても見られるようになりました。
事業承継を課題と考える社会情勢から金融機関も一定の支援を行っているようです。
ただ、これは私の意見になりますが、なるべくなら使って欲しくない手だと考えています。
その理由は、M&Aはどこまでもリスク性の高い事業投資であるからです。
特に中小企業のM&Aの場合、その大半は事業承継を目的とするM&Aになります。
多くの場合、その会社の収益の源泉の多くを代表者に頼っているケースがほとんどです。
代表者が退任した後は買手が対象会社をグリップしなければなりませんが、従業員の離職リスクや顧客離れも契約書を締結していたとしても起こり得ることであり、買収資金を借入している場合はいきなり計画と異なる状況が、発生しえます。
その際、借入で買収資金を賄っていると首が回らなくなる恐れがあります。
また、事業承継が必要な企業は成長が鈍化していることが大半であり、買収後に追加投資が必要なケースがほとんどでしょう。
そのような実態を鑑みると、買収資金は自己資金で賄うべきです。
担当者を決める
M&Aにおいて買収後の企業を誰が責任を持って運営するのかという点は、M&Aを検討する前に必ず自社内で整理しておきましょう。
M&Aをしたのに買収した会社を放置気味にしてしまったり、現場と意思疎通がうまくいかずに買収したけどもやはり売りに出したい、というようなことになってしまいますので。
事業承継を目的としたM&Aにおいては、経営陣がいなくなることがほとんどです。
経営者人材を育てるという意味において、非常に有益な機会になり得ると思いますので、自社の幹部候補を起用するというのが最も良いのではないかと思いますが、幹部人材の腹づもりをさせる上でも、事前にM&A戦略に巻き込んでおくということが非常に重要になると思っています。
M&Aを活用して買収したは良いが、放置気味というのは何度か見たことがありますので、是非とも気をつけていただきたいと思います。
終わりに
いかがでしたでしょうか?内容は全て当たり前のことになるのですが、M&Aとなるとテンションが上がってしまうのか、当たり前のことが疎かになりがちですから、くれぐれもこのコラムで記載させていただいた4点は必ず整理してM&A戦略を練ってみてください。