M&A仲介において利益相反が存在しない理由
こんにちは、物語工房の岡村です。今日はM&A仲介業においてよく指摘される、利益相反に対する小職の考えをお話ししたいと思います。 当事者である私がどう考えているのかをお話しすることで、実態を理解していただければ幸いです。ぜひ、参考になさってください。
M&A仲介において利益相反は存在しない、というか、存在しようがない。。。
よくM&A仲介で指摘される利益相反の問題ですが、私はそんなものはないと思っていますし、M&Aにおける業者の関わり方を考えればそんなものは存在しないことがわかります。
なぜなら、利益相反というのは、一般的にある組織に属する人の利益と組織の利益は反する際の行為を指すものであり、お客様にとって業者であるM&A仲介業者は、どこまでもM&Aを提案している一取引先にすぎないからです。
利益相反というのは、例えば、法人経営者の代表者個人が法人の銀行借入に対して債務保証をする等、会社にとってはメリットでも社長個人にはメリットではないといったことで、あくまでも組織内の話です。
会社法で規定される利益相反が組織内の人間に関する事項であるのに、それを持ってM&A仲介は利益相反と主張する輩がいることは失笑物です。
繰り返しますが、M&A仲介業者はお客様にとってはM&Aを提案してくる只の一業者であり、お客様の意思決定には関与することができません。
この状態でどうやって利益相反と指摘するのでしょうか?
おそらく、M&A仲介業者がお客様の意思決定に関与するということを指摘したいのでしょうが、それこそお客様の意見をコントロールできると思っている傲慢な考えであり、お客様を馬鹿にしていると思います。
すべての商売において、始まりは営業マンがきっかけになることが多いですが、最終的にはお客様ご自身でやるやらないをお決めになっていませんか?
皆様は、M&A仲介業者は神様か何かと思っているのでしょうか?
私達は、只のM&Aを提案する一介の業者、これに尽きます。
M&A仲介業者への批判は、盛り上がりを見せるM&A仲介業界への嫉妬からくる、壮大なポジショントークであるということです。
次に、“誰がM&A仲介業者を利益相反と言っているのか”をみていきましょう。
ここでは中小企業庁の指摘とFA業者からの指摘について見ていきたいと思います。
それぞれの主張をみながら、全てにおいて見解を述べたいと思います。
中小企業庁の指摘への見解
中小企業庁が策定した「中小M&Aガイドライン」のP57に仲介者における利益相反のリスクと現実的な対応策という項目があります。
以下、原文をそのまま転記します。
仲介者においては、譲り渡し側・譲り受け側間において利益相反のリスクがある(利益相反が直ちに違法となるものではない。)。例えば、譲り渡し側が譲り受け側に会社の事業を譲り渡す場合(事業譲渡)、譲り渡し側にとってはその代金(譲渡対価)が高い方が望ましい一方、譲り受け側にとっては譲渡対価が安い方が望ましく、構造的に譲り渡し側・譲り受け側の両者間において利益相反の状況が存在するといわれる。そのような状況において、仲介者が片方当事者(特に、リピーターになり得る譲り受け側)の利益を優先して取引をまとめるように動く動機があるという構造的な問題が指摘されている(なお、これに対しては、譲渡額が増加すると、これに連動して仲介者・FAの手数料も増加する形になることがあり、その場合には、逆に譲り渡し側の利益を優先して取引をまとめるように働く動機があるという指摘もある。)。
中小M&Aガイドライン P57
これが成立するための前提条件は、M&A仲介業者が売主と買主双方の意思決定を代わりにするという必要があります。
お客様は、ご自分が会社を売るもしくは買うという行為を一業者に委ねるのでしょうか?
どんなことも最終的な意思決定は顧客に委ね続けられますから、M&A仲介業者を活用することで利益相反が起きることはありません。
また、常連になりうる買手候補者に対して、M&A仲介業者が便宜を図るという点も指摘されていますが、これもおかしい。
FA業者にも常連になりうる顧客がいないということは言い切れないからです。というか、いると思います。
更に、同じ会社は一つもありません。何でもかんでも買収する会社はないのです。
ですから、これも成り立たない。
そもそも、M&Aを活用して会社を売るとなった際、どんなに立派で素晴らしい会社であっても、真剣なオファーは多くても5社前後になることが多いのです。
さて皆さん、年商数億の企業群の事業承継で5社もオファーをもらえることが当たり前にあると思いますか?
M&A仲介業者も馬鹿ではないので、必死に買手候補者を探している筈です。
まともなM&A仲介業者であれば、淡々と事実を伝えお客様に判断してもらうと思いますから、M&A仲介業で利益相反が起きるためには、意思決定をM&A仲介業者に委ねる必要がありますが、そんな馬鹿なお客様はいません。
FA業者への反論
個人的に最もキツイ批判を展開しているのが、FA業者さんが多いのかなあと思っています。
M&A仲介業者はFA業者と異なり双方から手数料をもらいますから、彼らからしたら面白くない。
そういう意図が見え隠れするというのが小職の見解です。
彼らが主張する、M&A仲介は利益相反だから問題だという手法がどれほどポジショントークか説明しましょう。
民法を盾にした主張
民法では双方代理を禁止しているから、M&A仲介は利益相反だ!という主張が散見されます。が、これはもう入り口からおかしい。
日本国内において、代理人行為は非弁行為に該当するものでしょうから、弁護士以外できません。
M&A仲介業者の契約は、およそ媒介契約か業務委託契約のいずれかであって、代理人契約を結んでいる業者がいるのならば、それは立派な“法令違反”です。
M&A仲介業者と契約する契約がどのようなものか考えれば、この主張は非常にレベルが低い話であることが容易に想像できます。
M&A仲介業者はマッチング業者だ
この類の批判もよく聞きますね。このような批判に対して小職が指摘することは1つで、M&Aを成約させるために業者を使うのではないのですか?ということです。 成功確率を高めるためにM&A仲介業者やFA業者を選定する訳ですから、この点においてFA業者もM&A仲介業者も同じはずですから、彼らの批判の底にあるものは別にありそうです。
最適な相手を見つけられるという主張
FA業者は最適な相手を見つけられるという主張があります。これも凄く傲慢な話だなあと感じています。
その理由は単純で、高く買ってくれる候補者を探すのがM&A仲介業者とFA業者双方の仕事であるのに、どうしてFA業者だけが高い相手を見つけられるのか、理解できません。
M&A仲介業者がお得意さんを優先するからという主張もございますが、M&Aの対象となる会社は一品物でして、中々お得意さんにしづらい物なんですが、、、ということなんですね。
FA業者は、神様なんでしょうか?
神様だから値段を意図してコントロールできるということなら、小職も会社を売る際はお願いしたいと思います。
また、M&A仲介業者は話をまとめるために値下圧力をかけるんだ!という意見もございます。これはもう主張がおかしい。
基本的にM&Aに関わる業者は、M&Aの成約がなければ売上があがりません。
FA業者は1円足りとも値下交渉に応じないということは、商流を鑑みたらおかしいことが分かりませんか?
そしてこの部分が本当に傲慢で欺瞞的で唾棄すべき点なんですが、これを主張するということは、あたかも交渉の当事者であるということを自ら示しているようなものなんです。
冒頭で説明差し上げた通り、M&Aに関わる業者の契約はM&A仲介業者、FA業者ともに媒介契約か業務委託契約にいずれかです。
代理人のような振る舞いは非弁行為に該当し、明確な法令違反ではないでしょうか?
M&Aをするかどうかの最終決定はお客様にあるのに、まるでFA業者も意思決定に加わるかのようにお客様に誤認させ安心させるのは卑怯です。 それともFA業者からすれば、お客様は自分たちの言うことが絶対に正しいので、言うことを聞かなければならないと思っているのでしょうか。
FA業者はより高い金額売却可能という主張に見え隠れする欺瞞
おそらく、FA業者がM&A仲介業者より高い金額で売却できるという主張の前提には、きちんとバリエーションをして事業計画を作成した上でアプローチをするということがあると思います。
ただこれ、小職は前職時代からM&Aを活用した売却相談を受けた場合、仲介方式だろうとFA方式だろうとM&Aに向けた準備の一環で必ず行っていることなので、意味がわからないです。
つまり、まともなM&A仲介業者ならやる作業なのです。
皆様にご理解いただきたいのは、およそ売買が成立するものは全て、相場があるということです。
相場を超え高い売却額を取りに行くということは、それだけ前提条件が増えます。
例えば、何年かは経営に携わるであったり、株式の2〜3割は段階的に取得するであったり。
小職自身、経営者様が引き続き売却後も経営にあたる前提で事業計画を作成しM&Aの成約を導いてきましたが、うまくいっている人もいますしそうでない人もいらっしゃいます。
M&Aに携わる業者は、M&Aの瞬間にしか立ち会えません。
M&Aが進んでいる状況では、売主様も気分が高揚していることが大半ですから、業者の提案を聞きがちでして、結果としてM&A後に幸せになっているかどうかは大いに検証が必要です。
今この時点での小職の結論は、M&Aをするなら売り切ることに尽きるであり、段階的に売却をするということは積極的にお勧めできません。
今までお山の大将をやってこられた経営者の方が、いきなり他の人を尊重しながらも経営に携わるという状況は、人によっては大きなストレスになるからで、結果として売主様の意向であった事業承継をするに反しているからです。
会社を売ると決めたら、売り切るに尽きます。
少し脱線しましたが、こういった売却に向けた準備を行うのが普通のことである以上、FA業者ならM&A仲介業者よりも高値で売却できるという論理は成り立たないですし、成り立つためには、業者自らが代理人にならねばなりませんが、それは法令違反です。
M&A仲介業者を批判する人たちの共通点
FA業者の方でM&A仲介業者への批判をしている方々のご経歴を追っていくと、証券会社やコンサルティング会社ご出身の方々が多い。つまり、大手の上場企業のM&Aに携わったであろう人々なんだろうなあということ。
彼らからしたら、M&Aとはこうあるべきという一種の固定観念があるんでしょうね。
でも、日本のM&A仲介は直近数十年で隆盛した新たな領域です。
彼らに対して小職が本当に情けないと思うのは、彼らがルールと思っているそのルールは、ただ米国のM&Aで利用されているそれをただただ翻訳したものであることであり、それに何ら疑問を持たないということです。
文化的な背景が異なれば意思決定のプロセスは異なりますから、日本のM&Aにおいて仲介方式がメジャーになってもなんら不思議はありません。
それとも、一般的に高学歴で頭の良い自分たちのいうことを大衆が支持するのが正しいと思っているのでしょうか?そうであれば、本当に傲慢なことです。
ここまでをお読みいただければ、如何にFA業者が必要以上にポジショントークを繰り広げているのか、ご理解いただけたかと思います。
情けないM&A仲介業者たち
ここまでM&A仲介業者に対する批判について反論してきました。ここからは、同業者への批判をしたいと思います。
はっきり言って、このレベルの批判を受けて明確に反論できない業界が、あまりにも情けないです。
妬みやっかみへの反論ができていない
上述した話をすれば良いのに、そうなってないのは、現場のレベルの低下ということが挙げられると思います。
近年は本当にM&A仲介業者が増えていることもあって、考えられないような光景を見聞きすることも増えました。
例えば、売り手に対して御社を買いたいと言ってる会社があると言って実際に面談させ、M&Aをやろうとするなどという事例です。
この状況なら、FA業者のM&A仲介業者に対する批判通りのことが起きるでしょう。完全に俎板の鯉になるわけですから。
現場レベルでもう少しレベルアップが必要です。ただ、それは各社がやる話ですが。
M&Aの本質は事業理解と人への共感
私どもの仕事は、会社を売ることです。会社は社長さんの熱意に共感した人々が集まった人の集合体です。
ですから、これを売るためにはどういった事業体なのか、どういう業界に属するものでどういう見通しを持っているのか、どういう人が働いているのか、こういうことを複合的に理解してその会社の価値をきちんと見てあげるということです。 それは決して、ExcelやPower Pointをいじって理解できる世界ではありません。
終わりに
いかがでしたでしょうか?
M&A仲介が利益相反であるという指摘は、M&Aの構造を考えれば成り立ちようがないことが、よくご理解いただけたと思います。
弊社は、売主は完全無料の新しいM&A仲介を立ち上げました。日本国の伝統を活かしながら、日本人らしいM&Aをするためです。
どしどしご相談ください、それでは。