新しいM&A仲介のコンセプトについて
こんにちは、物語工房の岡村です。
今日は、新しいM&A仲介を始めた理由とそのコンセプトについてお話ししたいと思います。
自分の会社を売ると決めた方にとって、どのM&A仲介業者に依頼すべきなのか、FA業者との違いはどこにあるのかを比較検討いただく上で参考になればと思います。
是非ご一読ください。
今のM&A仲介業界はおかしい
- 自分の欲求ばかりのM&A仲介業界
新しいM&A仲介と銘打って事業を始めた背景には、自分が所属する業界への違和感が大きかったことがありました。
私がM&A仲介業に入ったのは今から5年ほど前のことですが、その頃からM&Aのマッチングプラットフォームや新興のM&A仲介業者が一気に増加しました。
それと同時に、そんなバカな?というような話も沢山聞くようになりました。
例えば、売主の許可をとらず勝手に売却情報を流して興味がある先を探したり、具体的な買手がいないのにあたかもいるかのようなDMを送ってみたり、私からすればとても信じられないような話をしばしば聞くようになったのです。
また、SNSなどでM&Aで稼いでいることをひたすらアピールするような状況が今も続いています。
このような状況が意味するのは、M&A仲介業界の中には、自分の利益しか考えず顧客の利益や気持ちを無視している者がいるということです。
- こういったことがまかり通る理由
この背景にあることは何だろうかと自分なりに考えてみると、一つの理由に中小企業のM&Aの手法が確立されてきた経緯に起因すると思います。
これは大手のM&A仲介業者がやっているような手法、例えばDMやテレアポ、銀行や会計事務所等からの紹介を中心として、事業承継を必要とする会社オーナー、もしくは会社を売却したいというオーナーを見つけるという一連の手法を、新興のM&A仲介業者も踏襲してやり始めた結果だと思うのです。つまり全員が同じようなことをするから、顧客へのリスペクトなどいらない、ひたすら事業承継を検討しませんか?M&Aをしませんか?という、なんの付加価値もない営業活動が行われている。
ところが、現実に事業承継を検討せねばならない中小企業は山のようにあるから、これがまかり通ってしまう。
こうした手法であれ、顧客のニーズを満たすのであればその商売の方法を全否定することはできませんが、私自身は顧客へのリスペクトやそもそも商売の原則を無視したようなやり方をもって自分が商売をしたいとは思いません。
だから、新しいM&A仲介と銘打って取り組む私は、商売の原則に徹すると決めたのです。
新しいM&A仲介が目指すこと
- リベートを求めない
新しいM&A仲介において私が目指すことはひとつで、”仕入れたものをスピード感よく適正な価格で売る”という商売の原則を守ることに尽きます。
全ての商売は、どのような業種であっても仕入れたものを売ります。
勿論、仕入れたものを加工して売ったり、仕入れた情報から仕組を作って売ったり、業種によって工程を挟むことがあり得ますが、およそ全ての商売はこの仕入れたものを売るという流れになります。
ここで私は皆さんに質問したい。
あなたは仕入先に対して自社で販売するから金を払えと言ったことはありますか?
既存のM&A仲介業は仕入先(売主)からも金を取っている歪な構造になっており、私はこれに違和感をもちます。
仕入先からお金をもらうようなリベートが商慣習となっているケースは、小売業界等で一定期間一定量仕入れるから協力してよというようなものであり、この世に一つしかない会社の売却においてこのリベートがまかり通ることはどう考えてもおかしい。
一方、中小企業のM&Aが日本国内で生まれた1980年代は情報インフラが発達していませんでしたから、売れるか分からないリスクを業者が負うという発想を持ってM&A仲介業が成り立ってきたという背景は理解できます。
しかし、現在は情報インフラも相当発達しており、既存の商慣習を変革する必要があると思うのです。
だから私は、商売の原則である仕入れたものを売ることに徹することにします。
- 仕入れたものを売るために必要なものを徹底して磨く
皆さんは、自社の商品を売るために必死になってその良さや顧客に提供できるものがどのようなものなのかを考えませんか?
新しいM&A仲介は、これに徹するということです。
仕入れたものをきっちり売るためには、その事業への深い理解、またそこで働く人々の思いや考えを腹落ちするまで整理をし、それを概要書やM&Aを活用した会社の売却活動で利用する書面に落とし込んでいきます。
また、全てのプロセスにおいて起きる問題に真摯に対応し、思いやりを持った対応を心がけています。
これを徹底してやるには、会社のことを隅々まで知るとても骨の折れる作業になるので、事業承継を検討している方、会社を売りたいと考えている方は、M&Aを活用してそれを売却すると決めてから相談してもらわねばなりません。
しかしながら私は、深い事業理解を得た上でM&Aの売却活動を始める方がスピード感も金額感もそれを無視した方法と比較して格段に変わることを、皆さんにお約束できます。
だから、私は皆様にお約束したことを徹底するために様々な業界への知識、人への共感、世界情勢といったあらゆる情報を活用できるようにひたすら日々努力をします。
こんなことは当たり前のことですが、これに徹するM&A仲介業者がほとんどいない以上、私はやります。
今のM&A仲介業界は事業承継へのニーズが高まっている背景もあり、商売の原則である当たり前がおざなりになっても売上が上がるという状況です。
しかし私はそういった考えとは一線を画し、当たり前のことである顧客の事業・商売について理解するための真摯な努力を前提とした上で、できるだけ良い条件で会社を売るという行為に徹します。
- 日本の土壌に合った手法でM&Aを発展させる
ここまでお読みいただいた方は、仲介という概念についてネガティブに思われたかもしれません。
しかしながら私は、M&Aにおいて売主・買主双方からお金を頂戴する方法には違和感がありますが、M&Aに仲介という概念を採用することについては異論ありません。
どういうことかと申しますと、仲介という概念は全員合意の根回しの文化から生まれた非常に日本的なものであって、私はこれを大切にしたいからです。
独立前にクロスボーダーM&Aを手がけた際のことです。
それはOut-inと呼ばれるM&Aで外資系企業の日本法人が日本企業を買収するというものでしたが、親会社は英語を言語として使っていましたから英文と日本語双方での契約書作成を行う必要があり、そのドラフトをもらった時とても驚きました。
なぜなら、英文でできたその契約書の構成は、日本で利用されるM&Aの契約書の構成とほとんど同じ、いや一緒だったからです。
その時まで私は、契約書はそれぞれの国で異なるものであると勝手ながら思っていました。なぜなら、文化が異なるからです。
ところが、日本のM&Aで利用されているM&A契約のベースはM&Aの本場とも言える米国のそれを翻訳してそのまま利用しています。
米国の文化的な概念を盛り込んだ契約書が今日の日本のM&Aで広く流通しているのは、ビジネスを発展させるために書式を統一化する必要性があることは否定できませんが、実際のM&Aの現場では日本的な文化や慣習に影響されるものです。
つまり、日本人的な素養、相手の考えを推しはかり落とし所を探るという根回しの文化が多分に貢献しています。
しかし、この事実に一切触れず人によってはM&Aにおける仲介方式を徹底的に批判し、FA方式を礼賛しているのは、一面的な発想だと思います。
どのような国に生まれようとも、人はそこで生きる限りその国に根付いた文化を捨てることができません。
日本でM&Aをもっと普及させるためには、海外のやり方をそのまま適用するのでなく、取捨選択し日本的に更に発展させることではないでしょうか。
つまり、自分たちの社会に合った形でM&Aのルールが作られるべきではないでしょうか。
その場合、私は全員合意の根回しの文化を多分に活用する仲介方式をM&Aで活用することは、とても合理的であると思います。
批判に答える
- 利益相反について
M&A仲介という方式を利用すれば、利益相反が起きるのではないか?という意見があります。
これについては、こちらのコラム『M&A仲介において利益相反は存在しない理由』をご覧いただきたいのですが、かいつまんで申し上げるならば、利益相反という問題はM&Aにおいて仲介方式を採用しても起きません。
その理由は、どのような状況下においても最終的な意思決定は顧客に委ねられるためであり、業者が顧客の代わりに意思決定をするなどありえないことだからです。
M&A仲介において利益相反が起きるとすれば、M&A仲介業者が顧客の代わりに意思決定を行う必要がありますが、これは非弁行為となり明確な法令違反となります。
新しいM&A仲介においても、当然利益相反などはおきません。
そもそも売主から手数料をいただきませんし、弊社の売上を最大化するには買手に一円でも高く買ってもらわねばならない構造上、売主の商売に対する深い事業理解を徹底し双方が納得する適正な金額を導き出すことになりますので、新しいM&A仲介を活用いただくことがM&Aを活用した法人の売却において問題がないことは、弊社の商売上の構造を考えていただくと非常にシンプルで分かりやすいかと思います。
FAに対して思うこと
FAに対する見解についても、コラム『M&A仲介において利益相反は存在しない理由』に詳しく書いておりますので、よかったらご参照ください。
中小企業のM&Aにおいて、FAであれば利益相反が起きないということが嘘であることや、そもそも主張が欺瞞的であることがお分かりいただけるかと思います。
終わりに
いかがでしたでしょうか?
新しいM&A仲介がどのようなコンセプトであるのか、ご理解いただけたのではないかと思います。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
ぜひ参考になさってください、それでは。